Kokubu Ambitious Open Space
 

 

福岡県アンビシャス運動推進室 のホームページから

 

■第2章 子どもがアンビシャスになるための12の提案

1 提案の内容
 県民の方々から寄せられた800件以上の貴重な意見を踏まえ、私たち100人委員会では今後の青少年育成のあり方について鋭意検討してまいりました。その結論として、私たちは家庭・地域・学校・企業などで直ちに取り組むべき12の提案を行います。
 福岡県は、それぞれの地域で個性と特色があります。そうした地域の実情に合わせて、以下に述べることを手がかりにまずできることから始めましょう。

(1) まず、大人が意識を変えよう
 あいさつや基本的なマナーを守ることができない子ども、自分が家族の一員であることが実感できない子どもが少なくありません。
これは、大人自身にも責任があります。まず、大人が意識を変える必要があります。
 そのため、地域社会や職場研修などで親や大人の役割、子どもを育てるための知識を学ぶことが極めて有効であると考えます。
 たとえば:

まず、大人が自らの生活を見直し、子どもに手本を示そう。

地域や職場で父親学習や子育て研修などに積極的に取り組もう。

少なくとも週に一度は家に早く帰って子どもといっしょに食事をしよう。

少なくとも「家庭の日」(第3日曜日)は家族といっしょに過ごそう。

(2) 「うち」の家庭教育をそれぞれつくろう
 家庭は、すべての教育の出発点です。保護者は、それぞれの家で子どもたちがきちんとした生活習慣を身につけられるよう根気よくしつけなければなりません。
 共働きや単身赴任などで忙しい保護者が増えています。一方、テレビゲームの普及や子どもが自分の部屋を持つようになったことなどにより、親子の会話が少なくなり、家族のつながりも希薄化しています。そのため、保護者は意識して子どもたちと向き合うことが必要です。
 子どもの言い分を安易に受け入れるのではなく、善悪の判断を教えたりお互いに話し合う機会を持つなど、保護者が今一度、子どもに対する自分の責任を自覚し、我慢することも教え、しつけや育児に取り組むことが必要です。
 たとえば:

せめて食事のときはテレビを消すなど、家族で落ち着いて話をする機会をつくろう。

十分な睡眠をとり規則正しい生活をすることは自立の出発点です。早寝早起きの習慣を身につけさせよう。

それぞれの発達段階にふさわしい栄養を子どもがきちんと摂れるようにしよう。

家族の一員としての責任と自覚を持たせるため、家事の手伝いなどを分担させよう。

子どもの良いところを見つけ、しっかり誉めよう。悪いことをしたらきちんと叱ろう。

それぞれの家庭で「うちの教育方針」を作ろう。

(3) 乳幼児期から「社会力」をつけよう
 100人委員会の論議を通じて、人格形成の基礎は乳幼児期に培われることが改めて大きくクローズアップされました。乳幼児期のさまざまな体験が人間の人格形成の土台になります。人間の人格を高層ビルに例えると、乳幼児期はまさに基礎工事の時期に当たります。やがてその上に築きあげられるはずの構築物を基底で支える基礎工事をゆるがせにしてはなりません。乳児期に惜しみない愛情や多くの語りかけ、スキンシップを与えることによって「基本的信頼関係」を育むことができます。また、幼児期には友達といっしょに外で思いっきり遊ぶなどさまざまな体験をすることによって、子どもの「社会力」(人と人とのつながりや社会を作っていく力)が磨かれます。
 そのため、親が乳幼児期の育て方をしっかりと理解し、実践する必要がありますが、核家族化の進展や最初の赤ちゃんを産んだ母親の過半数が子どもに触れた体験がないなどさまざまな体験や知識が不足し、育児不安などストレスが高まっています。こうした状況の中、親同士で子育ての知恵を出し合うグループ活動や経験豊かな「先輩」の知恵を活用することが効果的です。保育園・幼稚園には、乳幼児を育てる多くの経験が蓄積されています。この知識や経験を地域社会に還元することが期待されます。
 たとえば:

保育園、幼稚園は、地域における子育て相談センターとしての機能をさらに強化しよう。

乳幼児の定期検診や保育園の入園式などの機会には「赤ちゃんに愛情と豊かなスキンシップを与えること」、「幼児を外で友達と思いっきり遊ばせること」、「誉め方、叱り方」などをみんなで学ぼう。

高齢者は、その豊かな経験を生かし、地域の育児アドバイザーになろう。

(4) 地域ぐるみで子どもを育てよう
 子どもたちは社会の宝です。子どもたちは、異年齢の子どもとの遊びや地域の文化・行事などへの参加を通して、あいさつをしたり、年長者とのつきあい方など多くのことを学び成長するものです。しかし、今日ではそうした機会やつながりが薄れています。
 アメリカでは、多くの人々が日常的にボランティア活動を行い、余暇にはクラブ・サークルなどに積極的に参加し、地域の中で子どもたちを育てています。
 「完全学校週5日制」が平成14年度から始まります。共働き世帯が増えている今日、公民館や空き教室などを活用して子どもたちの交流の場を速やかに確保することが必要です。
 たとえば:

公民館や空き教室などを活用し、子どもたちが放課後や休日に、友達と遊んだり、気軽に集まれる場所(たとえば「アンビシャス広場」など)を地域に作ろう。

地域の大人がボランティアとして参画し、子どもたちのさまざまな体験活動をサポートしよう。

地域で大人も子どももあいさつをしよう。

子どもが地域の中で友達を作るきっかけとなる大小さまざまなイベントを地域ぐるみで企画しよう。

子どもたちの自立や自主性を養うため、親元を離れての「通学合宿」なども積極的に増やそう。

(5) フロンティアに挑んだ先人たちに学ぼう
 今の子どもの多くは、それぞれが将来どのような人間になりたいかについて、必ずしも明確な人物像を描きにくいといわれています。従って、「立派な人になりなさい」というような抽象論ではなく、具体的な人物像を示すことが効果的です。すなわち偉人のエネルギーや意志の強さ、新しいことに挑戦する喜びや尊さを学び、自分もまたそうした目標に向かって努力する意欲が湧いてきます。
 たとえば:

演劇などの文化活動や野球・サッカーなどのスポーツ活動で地元や全国で活躍している人たちの志や努力に触れ、それを手本としよう。

偉人伝を読んだり、読書ボランティアなどの話を聞いたりして、目標となる先人、偉人を発見しよう。

NHK番組「プロジェクトX」などのドキュメンタリーやノンフィクション番組などから、新しいことに果敢に挑戦した先人達のエネルギーとチームワークのすばらしさに学ぼう。

(6) 読書をしよう
 自分の意見をしっかりと持ちつつ、他人とのコミュニケーションをするためには、日頃からしっかりした考え方や順序よく話すことが必要です。
 そうした能力を養うのは読書です。読書により知識を得、考えを深めることができます。読書は他人を思いやる心や自己の内面を見つめ直すまたとない機会です。
 たとえば:

全ての学校で「10分間読書運動」などを実践し、読書を習慣づけよう。

読み聞かせなどにより子どもたちの読書活動をさらに広げよう。

交流会などで子どものための読書ボランティアを育成し、その輪を広げよう。

(7) 自然を体験しよう
 人間は自然と触れ合うことにより、自然の偉大さや自然に生かされていることを知り、謙虚さを学びます。同時に、自然環境を守ることの大切さも実感します。
 また、自然の中で過ごすことにより、バーチャルリアリティでは味わえない本当の感動を体験し、困難に立ち向かう勇気を養うこともできます。
 平成14年度から完全学校週5日制が始まります。これを活用して、子どもたちが登山や魚釣りなど自然体験をすることができるよう、大人が積極的に機会を作っていくことが大切です。さらに、子どもたちが動物を飼ったり植物を育てたりすることも大切です。
 また、長期間自然の中で過ごすことは、困難に立ち向かう力を養い、子どもたちの心と体を鍛えることができます。そのため、子どもたちを自然に帰す仕組みを地域の大人たちの手で作る必要があります。
 たとえば:

自然の恵みを実感できる農業、林業、漁業など多様な体験活動に参加しよう。

便利な日常生活から離れて自然の中で共同生活を行う、長期サマーキャンプなどに参加しよう。

自分の知恵と責任でワイルドに遊ぶ冒険遊び場(例えば「プレイパーク」)をつくろう。

子どもたちから上手に遊びを引き出し、かつそれを見守る「プレイリーダー」を育てよう。

(8) 外国の青少年と切磋琢磨しよう
 一般的に日本の子どもは、外国の子どもに比べて自分の意見を堂々と述べる力が不足し、物事に挑戦する体力、精神力も低下しています。そのことは、グローバル化が進んでいる今日、憂慮すべきことであります。
 そこで、子どもたちを世界の子どもたちと交流させ、切磋琢磨させることが必要です。すでに県内市町村の中には海外に子どもを派遣したり、「アジア太平洋子ども大使」のホストファミリーになるなど、大きな実績を挙げているところもあります。このような取り組みをさらに拡大し、子どもたちの交流、「他流試合」などの機会を増やすことが重要です。
 たとえば:

海外でのサマーキャンプを通し、世界の子どもと一緒に野外活動や文化活動を楽しむための「青少年アンビシャスの翼」を飛ばそう。

世界の子どもと囲碁やサッカー、ロボット・コンテストなどで対戦しよう。

外国の子どものホームステイを積極的に受け入れよう。

(9) 自らを鍛え、得意技を持とう
 我が国は、グローバル化の中で世界との厳しい競争にさらされています。
集団所属により安心感や誇りが維持された従来型の社会システムが、今や揺らいでいます。そのため、これからの若者にとっては、「学歴」よりも「何を学んできたか」、「何ができるか」が大切になります。
 このような状況の中で、子どもには、自分にしかできない得意技を見つけ、たくましい個人として、国際社会で活躍できる能力が求められています。
 学問に限らず、芸術・スポーツ・ものづくりなどいろいろな分野で目標を定め、自分を鍛え、自らの得意分野を伸ばすことが肝要です。
 たとえば:

子どもたちがそれぞれ自己の目標を設定し、それに向かって挑戦する、いわゆる「目標宣言運動」に取り組もう。目標を達成した子どもを表彰し、失敗した子どもは励まそう。

子どもたちの創造性や社会性を育むため、子どもがチームをつくり、いろいろな分野の研究・活動を自主的に行うのを支援しよう。

得意技を発揮できるさまざまな分野のコンテストに挑戦する機会をつくろう。

子どもたちにやる気を起こさせるため、本県出身の有名人たちに出身校に来てもらい、体験談や得意技を生かした授業をしてもらおう。

(10) 社会体験やボランティア活動をしよう
 社会は人々が支え合って成り立っています。
 社会体験やボランティア活動は、その活動を通じて社会の一員としての自覚を一層促します。さらに、その活動を通じて、自主性を高め「社会力」を身につけることもできます。
 また子どもたちは、「就業体験」を通じて、社会のしくみや働くことの意味・大切さを実感することができます。
 そのため、さまざまな社会体験やボランティア体験の機会を作るとともに、中高生や大学生がリーダーとなってこうした活動に参画することが望まれます。
 たとえば:

親の職場を見学し働くことの意味をかみしめよう。

農林水産業、ものづくりの現場などさまざまな職場での就業体験を増やそう。

子どもたちが老人福祉施設への訪問や清掃活動などのボランティア活動に自主的に参加できるよう積極的に支援しよう。

(11) 学校はアンビシャス運動の軸になろう
 学校は、学習やさまざまな体験活動、日ごろの先生・友達との交流を通して、豊かな人間性を磨き、将来の社会的自立に向けて準備をする大切な場です。
 そのため、一日の大半を過ごす学校での生活はとりわけ大切にする必要があります。
 我が国の子どもたちは、自分の意見を堂々と述べ相手に理解させる技能に欠ける面があります。つまり、自己表現が苦手ということです。したがって、学校ではコミュニケーション能力を高めるための教育に力を注ぐ必要があります。
 さらに、地域に開かれた学校を目指し、学校の情報や要望を家庭や地域に積極的に発信するとともに、校長をはじめ教職員が家庭や地域のニーズを的確に把握する必要があります。こうした諸活動を通じて、学校を軸とした家庭、地域、企業などの連携を深め、人間関係のより豊かな楽しい学校に飛躍することを期待します。
 たとえば:

学校で「コミュニケーション能力を高めるための授業」を推進しよう。

社会で活躍する企業人、保護者、地域の人びとを積極的に招き、授業や交流を通して「生きた手本」にふれさせよう。

地域や企業の人たちも学校の行事に参加するなど積極的に学校に協力しよう。

留学生を招いて交流をする機会などをさらに増やそう。

学校はホームページなどを使って、保護者・地域・企業と情報を交換しよう。

(12) 企業も大学も意識を変えよう
 企業の役割は重要です。いまだに学歴だけで安定した生活が送れると思っている親は少なくないのが現状です。企業の経営者は、今や「学歴」重視から「能力」重視の世の中になったことや得意技の重要性などにつき社会に明確に発言する必要があります。
 企業には、その土地や施設を地域に開放し、また保護者を家庭に「返す」ことも、求められています。
 一方、大学の役割も重要です。アメリカ・南カリフォルニア大学では、地域と連携して子どもたちの放課後プログラムを実施したり、学生がボランティアとして地域に出てコンピューターの指導や医学的ケアを行っています。この活動により学生も大学で学んだことを地域で活かすことができ、地域もボランティアにより活性化します。我が国の大学でもこうした活動をより一層充実させることが望まれます。
 たとえば:

PTAの会合などで、企業人が求めている人間像などを明示しよう。

企業は幅広く学校活動に協力し、「職場見学」や「就業体験」の機会を積極的に増やそう。

大学は地域や学校との連携を深めるためのプログラムをさらに充実しよう。

大学は、学生のボランティア活動をさらに奨励しよう。