会長提出議案 第2号
地方税財源の充実確保及び地方創生・地方分権の推進に関する決議(案)
 我が国の景気は、緩やかに回復しているものの、物価高などの影響で依然として厳しい状況にある。また、人口減少・少子高齢化の加速やデジタル技術の進化などにより、経済・社会・地域の構造変化に拍車がかかり、地方移住の関心の高まりやテレワークの普及など国民の価値観や生活態様も変わりつつある。
 地方自治体、とりわけ都市地域の自治体では、現下の厳しい経済・社会状況の中、新たな行政需要に適切に対応しつつ、こども・子育て政策の強化や福祉・医療サービスの充実、防災・減災対策の推進、地域の資源を生かした都市の再生や活力増進などに安定的・持続的に取り組んでいく必要がある。
 よって、国においては、我が国の未来像を幅広く展望し、地方税財源の充実確保をはじめ、地方創生及び地方分権の推進、デジタル社会の実現など、地方行財政の充実強化に向け、特に下記の事項を実現されるよう強く要望する。
1 地方税財源の充実確保
  (1) 令和7年度地方財政対策
     地方創生とデジタル化、社会保障、防災・減災などの重要課題や人件費の増加、物価高に対応するため、地方財政の歳出の伸びを十分確保した上で、地方自治体の安定的な財政運営に必要な地方税・地方交付税等の一般財源総額の充実確保を図ること。
     地方交付税については、引き続き財源保障機能と財源調整機能を堅持すること。
     地方の財源不足の補填については、本来、地方交付税の法定率の引上げにより対応すべきであり、臨時財政対策債が累増することがないよう、その発行を可能な限り縮小すること。
  (2) 令和7年度税制改正
     税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築に努めるほか、適正・公平な課税の実現と新たな課題に対応する観点から、以下の事項に取り組むこと。
   
@ 固定資産税は、市町村財政を支える重要な基幹税であることから、その安定的確保を図ることとし、制度の根幹を揺るがす見直しは断じて行わないこと。また、生産性の向上や賃上げの促進など、経済対策や政策的措置については、本来、市町村の基幹税である固定資産税を用いて行うべきではなく、期限の到来をもって確実に終了すること。
A 自動車関係諸税の見直しに当たっては、電動車の比重が大きくなる中、社会インフラの更新・老朽化対策や防災・減災事業など、地方の財政需要に対応した税源を安定的に確保できるようにすること。
B ゴルフ場利用税について、引き続き現行制度を堅持すること。
C 法人事業税について、電気・ガス供給業に係る収入金額課税の現行制度を堅持すること。
D 経済のデジタル化に伴う国際課税ルールの見直しにより、法人課税に関する国内の税制を整備する場合には、地方法人課税分が含まれる点を踏まえて制度を構築すること。
2 地方創生の推進
  (1) デジタル田園都市国家構想の着実な推進
     地方創生の推進及びデジタル田園都市国家構想の実現に向けて、地方の主体的かつ継続的な取組を支援するため、「デジタル田園都市国家構想交付金」については、安定的に予算枠を確保・拡充するとともに、更なる制度の拡充やより弾力的で柔軟な取扱いを図ること。
  (2) 「地方創生推進費」の継続・拡充
     地方財政計画における「地方創生推進費」を継続・拡充するとともに、算定に当たっては、条件不利地域や財政力の脆弱な市町村に配慮すること。
  (3) 地方創生関連施策の拡充
   
@ 地方の意見を踏まえ、「地方大学・地域産業創生交付金」の採択件数の拡大を図ること。
A 地方創生に資するテレワークの推進、地方へのサテライトキヤンパス設置など地方創生施策を積極的に展開すること。
3 地方分権の推進
  (1) 自治体の自主性の尊重
     提案募集方式の積極的な運用を図り、国から地方への「事務・権限の移譲」と「義務付け・枠付けの緩和」を進めること。
     事務・権限の移譲に当たっては、一般財源ベースでの適切な財源移転を一体的に行うとともに、人員等の配置については、地方の自主性を十分尊重すること。
     また、義務付け・枠付けの緩和に当たっては、「従うべき基準」の原則廃止又は参酌化に積極的に取り組むこと。
  (2) 「議会の議決」の尊重
     議会の議決を不要とする提案については、二元代表制における議会の意義と権能を踏まえて、慎重に対応すること。
4 こども・子育て政策の強化
   児童手当の拡充、こども誰でも通園制度(仮称)の創設など、「こども・子育て支援加速化プラン」において示されている全国一律で行う施策の実施に必要な財源については、地方負担分も含めて国の責任において確実に確保すること。
   全国一律で行う施策に加え、地方がその実情に応じて行うサービスの提供などについても、地方自治体の創意工夫が生かせるよう、長期的・安定的な地方財源の確保・充実を図ること。
5 デジタル社会の実現
  (1) デジタル格差の解消
     地域間のデジタル格差が生じないように、5G、光ファイバ等のデジタルインフラを早期に整備するとともに、専門的なデジタル人材の計画的な育成確保を図ること。
  (2) 個人の権利利益の保護
     高度情報通信ネットワークの利用が個人の思想信条、表現、プライバシー等に係る情報収集の手段として用いられることのないように、個人情報の目的外利用や第三者への提供に係る取扱いを含め、個人の権利利益の保護に必要な措置を講じること。
  (3) 基幹業務システムの標準化等の安全・確実な実現
     令和7年度を期限とする地方自治体の基幹業務システムの標準化とガバメントクラウドへの移行については、住民サービスの低下を招くことなく安全・確実に実現できるよう、各自治体の推進体制や進捗状況等も踏まえ、適切な移行期限を設定するなど、柔軟に対応すること。
     また、「デジタル基盤改革支援補助金」については、引き続き、補助上限額の見直し及び交付対象の拡大を図り、移行に係る経費について全額国庫補助により必要額を確実に措置するとともに、影響を受ける全てのシステムの改修等に要する経費についても財政的支援を確実に行うこと。
     さらに、ガバメントクラウドの利用料については、先行事例や既にクラウドで運用している地方自治体の実証分析等を行った上で、地方の意見を丁寧に聴きながら協議を進めるとともに、国と地方自治体のネットワーク統合等により地方の負担増とならないよう配慮すること。
     地方の情報産業の発展やこれを支える人材育成の妨げにならないよう十分配慮すること。
   以上決議する。
令和6年5月22日
全国市議会議長会