会長提出議案 第4号
頻発・激甚化する大規模災害等からの防災・減災対策
及び復旧・復興対策等に関する決議(案)
 近年、集中豪雨や台風、地震など様々な自然災害が頻発し、住民生活の安全・安心が脅かされる甚大な被害が発生している。本年1月1日には、最大震度7の能登半島地震が発生し、石川県をはじめ新潟県、富山県、福井県など広い範囲に深刻な人的・物的被害をもたらしている。
 こうした災害から、国民の生命、身体及び財産を守るためには、ハード・ソフト両面から様々な防災・減災対策のより一層の推進が急務である。
 また、災害発生時の避難対策の強化や避難所の環境整備とともに、災害発生後の迅速な復旧・復興対策が重要である。
 よって、国においては、防災・減災対策及び復旧・復興対策等の充実強化に向け、特に下記の事項を実現されるよう強く要望する。
1 地震・津波・火山噴火対策等の充実強化について
  (1) 国土強靭化基本法、南海トラフ地震や首都直下地震等に係る特別措置法など、災害関連諸法に基づく施策を着実に推進すること。
  (2) 地震による建築物の倒壊防止のため、建築物の耐震診断・耐震改修に係る財政支援措置や技術力の確保に関する取組の充実強化を図ること。
2 台風・集中豪雨・豪雪対策等の充実強化について
  (1) 台風等による広域的な河川の氾濫対策のため、堤防整備や治水ダム建設など流域全体の関係者が協働する流域治水について、十分な財政措置を講じること。
  (2) 豪雪被害に係る除排雪経費の所要額の確保を図ること。また、除排雪を行う事業者の支援や住民の安全確保のための体制整備など、雪害対策の推進を図ること。
3 土石流対策の強化について
   改正後の宅地造成及び特定盛土等規制法に基づき、規制区域指定のための基礎調査が必要となるが、地方自治体の事務負担や経費の増加が見込まれることから、負担軽減に向けた制度設計を検討するとともに、財政的及び技術的支援を積極的に講じること。
4 防災・安全に資する社会資本整備事業への支援について
  (1) 地方財政計画における緊急防災・減災事業債を恒久化するとともに、元利償還金に対する交付税措置の充実、対象事業の拡大を図ること。
  (2) 頻発・激甚化する災害への対策やインフラの老朽化対策を重点的かつ集中的に取り組むため、現下の資材価格の高騰等も踏まえ、「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」を着実に推進すること。
また、改正後の国土強靭化基本法を踏まえ、5か年加速化対策後も継続的・安定的に国土強靭化を推進できるよう、必要な予算・財源を別枠で確保するなど十分配慮すること。
  (3) インフラの防災・老朽化対策について、ハード・ソフトの両面で事前の予防対策から復旧・復興までを見据えた自由度の高い交付金の創設などを図るとともに、地方財政計画における公共施設等適正管理推進事業債の所要額の確保、対象事業の拡大を図ること。
  (4) 災害時の停電防止のため、送電・配電施設の強靭化、非常用電源対策の強化について、事業者とともに取組を推進すること。また、その他ライフライン及び道路や鉄道などの各種インフラについても、一層の強靭化を図ること。
  (5) 災害ハザードエリアに居住する住民等について、安全で利便性の高い居住誘導区域等への移転を推進すること。
5 災害復旧・復興支援の充実強化について
  (1) 被災自治体の災害復旧・復興事業に対する支援の充実強化を図ること。なお、将来の災害に備え、原形復旧にとどまらず改良復旧を積極的に推進すること。
  (2) 災害復旧事業に関する国庫補助採択基準の緩和や被災した事業所施設等についても補助対象とするなど、補助対象施設の拡大を図ること。
  (3) 広域災害では、地域によって被害状況や必要な復旧・復興対策が異なることから、発生後、関係機関等が被害の全容を可及的速やかに把握できる体制とシステムの強化を図ること。
  (4) 被災者支援については、災害救助法や被災者生活再建支援法、国の個別補助制度など、趣旨の異なる支援制度が存在することから、被災者にとって分かりやすく、不公平感を招かない制度設計を行うこと。なお、被災者生活再建支援制度については、支給額の増額、適用条件の緩和など、更なる充実を検討すること。
  (5) 近年の災害の多発に鑑み、災害の事前の備えとしての地震保険や水災補償などの加入について、国において周知を図るだけでなく、保険料控除制度の拡充など、加入促進に向けた取組を図ること。
6 各種災害からの避難対策の強化について
  (1) 住民の速やかな避難行動を促すため、避難所について冷暖房の整備に加えプライバシーの確保や授乳室の設置など、きめ細やかな配慮が可能となるよう支援体制の充実強化を図ること。
  (2) 避難所について、感染症対策をはじめ、衛生・生活環境水準の改善が図られるよう、設備・備品の確保、医療救護体制の整備などを支援すること。
  (3) 洪水や土砂崩れなどの危険度や避難経路を住民が正しく理解し、適切に避難行動がとれるよう、ハザードマップの活用等による防災知識の普及啓発を強化し、国民全体に対する防災意識の醸成を図ること。
  (4) 地方自治体による適時適切な避難指示等の発令に資するため、災害予測システムなどの新技術の導入・運営に係る十分な財政支援措置を講じること。また、線状降水帯予測精度向上のための二重偏波気象レーダーの設置及び迅速な地震速報や津波予警報のための多機能型地震観測装置の老朽化対策について十分な財源を確保すること。
7 消防防災体制の充実強化について
  (1) 地方自治体の消防防災体制の一層の充実を図るため、消防防災施設・設備整備に対する財政措置を拡充すること。
  (2) 地域の防災力の強化を図るため、消防団の装備の充実や団員の待遇改善等に対する財政措置を拡充すること。
8 医療救護体制の充実強化について
   災害発生時に入院患者の安全の確保や被災者に対する適切な医療を提供するため、医療機関の耐震化や医薬品・資機材の整備、医療救護に係る人材育成・確保など医療救護体制の充実強化を図ること。
9 原子力発電所の安全・防災対策の充実強化について
   東京電力福島第一原子力発電所事故の原因や対応の検証結果を踏まえ、各地の原子力発電所において万全の安全対策及び防災対策の強化を図ること。
 
   以上決議する。
令和6年5月22日
全国市議会議長会